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最重要はスパコンにあらず

スーパーに買い物に行って私がカートを引いていたら、妻が別の人のカートにお肉を入れてしまいました。

常に妻の隣にぴったりと引っ付いていないといけないようです。以後気をつけます。

さて、本題です。

事業仕分けが終わりましたね。後半にはノーベル賞受賞者まで出てきて、科学技術予算の削減に猛烈に抗議しました。マスコミも世論も、わりと議論が盛り上がっていたようです。この話の代表例ともいえるのが次世代スーパーコンピュータの存続に関することだと思います。このブログでも、過去のエントリーでスパコンの事業仕分けでの発言「2位ではだめなのか」について取り上げました(「2位ではだめなのか?」の衝撃)。閣僚の方々にも、スパコンを復活させるという方もいれば、仕分け結果どおりにやるんだという方もいます。いったいどうなるのか、12月半ば位までが勝負なんだと思います。

しかし、私が危惧するのはあまりにもスパコンが注目されすぎていて、仮にスパコンが復活となったとき、他の科学技術予算が削られてもほとんどの人が気づかないんじゃないかということです。個人的な意見ですけど、科学技術予算で最も重要なのは、特に若手の雇用に関する予算(日本学術振興会の特別研究員など)や競争的研究資金(科学研究費補助金など)だと思います。なぜなら、これらは科学技術全般に関わるもので、特に人材の雇用に関わる予算がたとえ1年間でも途絶えてしまうと、その後に甚大な影響を及ぼすと考えられるからです。それに対して、そもそもスパコンの製作自体は応用研究であるうえ、このスパコンに関わる研究者の数は限定的です。乱暴ですけど、どうしてもどちらかを削らなければならないとなったら、断腸の思いでスパコンを切って、その代わり、若手の雇用に関する予算や競争的研究資金を死守せざるを得ないと思います。

若手の雇用に関してですが、よく「ポスドク」とか「任期付き研究員」という言葉が出てきます。どちらも2,3年、長くて5年くらいの任期のついたポジションです。近年の若手研究者は博士課程を修了した後、こうしたポジションに就く人が多いのです。私も四年間やっておりました。こうしたポスドクをいわゆるニートと比較した仕分け人がいたようですが、間違った認識だと思います。例えば大学の研究室ではたいていの場合、正規職員は教授、准教授、助教一人ずつといったところです。教授一人しかいないという場合もよくあります。ところで、人にもよるでしょうけど、教授や准教授が自ら実験をするということは、私の知る限りほとんどありません。じゃあだれが実験するかといったら、ポスドクと大学院の学生なんです。近年日本からの論文数が増加しているようですが、これはポスドクの増加と強く関係していると思います。また、大学院生から見れば、ポスドクは現場の研究者ですから、大学院生の教育にも少なからず貢献していると思います。ですので、現状で無計画にポスドクを激減させてしまったら、ポスドクの方々の生活はもちろんですが、大学などの研究機関にも大打撃でしょう。

実は、こうしたポスドクの任期後のポストがないという大問題が起こっています。「ポスドク問題」などでネット上で検索すればたくさん引っかかると思います。文科省が国策として博士を増やしてきたツケだとよく批判されますが、これは本当に難しい問題だと思います。単純計算ですが、博士全員が教授になるとしたら、大学の教授一人が一生涯で輩出できる博士は一人ということになってしまいます。国の研究所の研究員のポストを含めてもせいぜい2, 3人でしょう。こうなってしまったら、博士課程の学生とポスドクがダブルで激減しますから、それこそ基礎研究は壊滅でしょう。とはいえ、大学や国の研究所にポストを増やす余力が国や私立大学にあるとは思えませんし、ポストを増やし続けなければ結局は解決しないかもしれません。また、企業が採用するのは主に修士課程修了の学生さんたちです。採用される側にしても、3年間学費を払って博士課程を出てから企業に就職するくらいなら、修士卒で就職して給料をもらった方が良かったのにと考えるのは普通でしょう。博士課程に進むことを決めた時点で、大学や国の研究機関に勤める道を選んだと考える学生が大半だと思います。また、ベンチャーの起業は、これから国としても活性化させなければならないことなんでしょうけど、「起業すればいい」で雇用問題が解決するなら、どの国も苦労しないでしょう。

私には解決策は分からないし、ポスドクや大学、および企業の意識変化なども必要で、おそらく即座に解決する方法なんてないでしょう。しかし、現状のシステムを変える必要があるのは間違いないと思いますし、そのときはどこかしらで痛みを伴うのは仕方ないでしょう。しかし、具体的にどう変えるかを決める前に予算だけ減らしたら、悲劇を生むだけだと思います。ぜひ、与党の皆様には長期的なビジョンに基づいて、決して安易な削減に至らないようにお願いしたいと思います。

いろんな人が書いている内容を長々と書いてしまいましたが、
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「2位ではだめなのか?」の衝撃

母親に「お前にプリウスを運転できるのか?」と言われました。
いつもデミオに乗っているのに...

理不尽極まりないですが、本題です。

今日は、msn産経ニュース(2009.11.13)から。政治的なことは取り上げるつもりはなかったのですが、例の事業仕分けであんまりな発言があったので。以下、引用です。

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【事業仕分け】最先端科学も“敗北” 「スパコン世界一」を否定 ノーベル賞受賞の野依氏憤慨

政府の行政刷新会議の13日の仕分け作業は、次世代スーパーコンピューターの開発予算に事実上の「ノー」を突きつけた。議論の方向性を決定づけたのは「(コンピューター性能で)世界一を目指す理由は何か。2位ではだめなのか」という仕分け人の発言。結局、「科学技術立国日本」を否定しかねない結論が導かれ、文科省幹部は「日本の科学技術振興政策は終わった」と吐き捨てた。

 次世代スパコンは最先端の半導体技術を利用。ウイルス解析や気候変動問題のシミュレーションなど広範な研究での活用が期待されている。「1秒あたり1京回」という計算速度が売りで、現在、世界一とされる米国製の10倍の速度になる算段だ。平成24年度から本格稼働の予定だが、総額約700億円の国費が今後必要なため、財務省は見直しを求めている。

 この日、口火を切ったのは蓮舫参院議員。その後も「一時的にトップを取る意味はどれくらいあるか」(泉健太内閣府政務官)「一番だから良いわけではない」(金田康正東大院教授)「ハードで世界一になればソフトにも波及というが分野で違う」(松井孝典・千葉工業大惑星探査研究センター所長)などと、同調者が相次いだ。

 文科省側は「技術開発が遅れると、すべてで背中を見ることになる」と防戦したが、圧倒的な「世界一不要論」を前に敗北。同研究所の理事長でノーベル化学賞受賞者の野依(のより)良治氏は「(スパコンなしで)科学技術創造立国はありえない」と憤慨していた。
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まあ、斬新というか、研究者としてはモチベーションをそがれる意見です。科学技術における順位って、あくまで世界中で世界トップに立とうと努力して、その結果として出てくるものだと思うのですが。はじめから世界2位を狙うなら、開発なんかしないで、アメリカから買ってくることを考えればよさそうなものです。スパコンは応用に軍事も絡んでくるので、世界1位のスパコンをそのまま売ってくれるとは思えませんが、交渉すれば少しスペックを落としたものを大喜びで売ってくれるんじゃないでしょうか。もっとも、技術はどんどん進歩していきますから、出来上がったころには世界2位ですらなくなっているでしょうけど。多額の費用をかけて世界1位を目指すより、費用を落として世界2位を開発する方が無駄だと私は思います。まあ、買うとなったら、それこそ科学技術創造立国はありえないでしょう。

それにしても、「2位でいいじゃないか」と考える人がいること自体は、人それぞれの考え方ですから仕方ないと思うのですが、これに同調する人が有識者と呼ばれている人の中でゴロゴロと出てきて、「世界一不要論」が圧倒的になるというのは、一体どういうことなんでしょうか?この件に限ったことではないのですが、少なくともニュースを見ている限り、仕分け人が全部で10人以上はいるはずなのに、仕分け人の中で質疑応答中に意見が割れたことがないように見受けられます。はじめから、どうやって攻め立てるかが根回しされているんじゃないかと勘ぐってしまいたくなるのですが、いかがでしょうか?

「世界一不要論」に同調した金田康正東大院教授は、計算機科学の分野で功績のある方だそうです。松井孝典・千葉工業大惑星探査研究センター所長も著名な惑星科学の研究者だそうです。「予算を減らせ」はまだ分からないでもないですが、「世界一になる必要がない」的な意見をどうして持たれているのか、私にはさっぱり理解できません。両先生の今後の去就に注目してみたいと思います。ちなみに、今回の事業仕分けですが、国立大学の運営交付金をはじめ、いくつかの独立行政法人の研究所の運営交付金、勤務先以外から与えられる公的な外部研究資金(科研費JSTのERATO・CREST・さきがけNEDOなどなど)、さらには大学と企業との共同研究に関係する産学官連携に関する資金などがことごとく対象になっています。国公立および私立の大学、国立および独法の研究機関、さらには民間企業を含め、科学技術の研究者は大体これらの事業と利害関係があると思います。すでに引退されたノーベル賞受賞者の方々なども、理化学研究所の所長をやっている野依先生をはじめ、ほとんどの方が今でも利害関係者なんでしょう。今回の事業仕分けの仕分け人として、利害関係者でない科学技術の研究者を探すのは至難の業だと思います。

事業仕分けの結果は「来年度の予算計上の見送りに限りなく近い縮減」だそうです。この通りになったら、どうなっちゃうのでしょう。スパコン製作を担当しているのは富士通だそうですが、「とりあえず1年は凍結」となったら、人員をどう配置するでしょうか。私は企業経営について完全に素人ですけど、「それじゃあ、とりあえず技術者は1年間だけ他の部署でお手伝い」なんてことにはならないでしょうね。本気で撤退を考えてもよさそうなものです。どうしてこういう中途半端な評決になるんでしょう?あとで、「スパコン撤退は失敗だった」となったときに、「私達は撤退しろとは言っていない」と言い訳するためでしょうか?

最後にもう一つ。asahi.comの同じトピックの記事をご覧下さい。産経とは違いがいくつかありますけど、一点だけ、文科省および研究所側からの反論にご注目ください。産経の方は、「技術開発が遅れると、すべてで背中を見ることになる」。実に正攻法の反論だと思います。それに対して、朝日の記事ですが、「サイエンスには費用対効果がなじまないものがある」。...なんなんですか?この、ピントのずれた回答は。私は事業仕分けの模様を実際に見たことがないので正確なことは分からないのですが、朝日が、喧々諤々の議論の中で出てきた反論の中から弱いものを選び出し、前後の議論の脈絡を取っ払って記事にしたと考えたくなるのですが、いかがでしょうか?ネット上でよく取りざたされるマスコミの偏向報道の一つでしょうか?

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プロフィール

バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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