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物理の基礎と精密計測

今日は得意料理の回鍋肉を作りました。CookDoですが、おいしかったです。

さて、本題です。

今回も雑誌「パリティ」(Vol. 24, No. 10 2009-10)の「ニュースダイジェスト」から。今回のネタはかなりヘビーです。厳しいようなら読み飛ばしても良いと思います。

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重力のローレンツ不変性を検証する

今日の最も成功している基本的理論---それが重力、電磁気力、あるいは素粒子についての理論であっても---によると、物理法則は慣性系にいるすべての観測者にとって同一であり、彼らの運動の速度や方向には依存しないという。このいわゆるローレンツ不変性は、量子場理論ではこれまでにも詳細に検証されてきた(Physics Today 2004年7月号40ページ)。だがこれまで、重力相互作用のローレンツ不変性はあまり注目されてこなかった。重力は非常に弱いため、きわめて感度が高い実験を行う必要があるというのがその主な理由である。ローレンツ不変性の検証は一般に、"標準モデルの拡張"という枠組みの中で行われるが、それに含まれている一連の係数のうち9つが重力の効果を反映している。ゼロでない係数が1つでもあれば、ローレンツ不変性が破れていることを示し、一般相対性理論の変種、あるいは標準モデルを超える物理ともいえる量子重力への糸口が明らかになるかもしれない。
 これまでにまだ求められていなかったいくつかの係数の値を、カリフォルニア大学バークレー校のミュラー(Holger Muller)たちが突き止めた。原子泉を備えた原子干渉計を使って、彼らは地球の回転にともなう重力加速度gの異常な変化を見出そうとした。物理学者たちは新しい結果と以前の実験結果、および月の測距データを組み合わせて、解析を行った。その最終的な結果は---重力に関係する9つの係数のうち、5個は10億分の1、3つは100万分の1の精度でゼロであることが今回わかった。残りの1つはまだ確定していない。研究チームまた、おそらくは誘導原子などを利用することで、精度のさらなる改善が見込まれることを明らかにした。(K.-Y. Chung et al., Phys. Rev. D 80, 016002, 2009)
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これは私ごときにはちゃんとした解説は難しいです。
ここから先は憶測とごまかしのオンパレードですが、可能な限り読み解いていきましょう。

「ローレンツ不変性」というのは相対性理論の基本原理と呼べるものです。難しく見えるけどよく読むと当たり前のように思えるこのローレンツ不変性と、光速が不変であることを仮定したら、時間は絶対的ではないとか、質量があると時空がゆがむとかいった、相対性理論の摩訶不思議な結論が出てきたという解釈でよいはずです。もっとちゃんと調べたいなら、相対性理論関係の専門書や一般向け本がたくさんあるので、参考にしていただければと思います。(と逃げさせてください)。また、標準モデルと呼ばれる素粒子の運動を記述する理論も、ローレンツ不変性を前提としているようです。

しかし、もしローレンツ不変性が成り立たなかったら前提が崩れてしまいます。それで、どうすればローレンツ不変性が正しいと言えるんだろうと、おそらく理論屋さんが考えたんでしょう。それが「標準モデルの拡張」で、少なくとも重力相互作用の関わる部分に関しては、「測定可能な9個の一連の係数が全てゼロになればよい」と導かれたようです。しかし、重力なんて、誰もが日ごろ感じている力について全く調べられてなかったというのは、意外ですよね?

さて、この一連の係数をどう測定するか?この記事によれば、重力加速度を精密に測れば測定可能なようです。そして重力加速度を精密に測る方法として用いたのが、「原子泉を備えた原子干渉計」とのことです。干渉計というのは、2つの波の重ねあわせでお互いが強めあったり弱めあったりすることを利用した計測系のこと。波の位相差が高感度に観測できるので精密計測によく用いられます。原子干渉計とは波として「原子」を用いた干渉計です。量子力学では、粒子は波としての性質も持ち合わせているので、原子も波とみなせるのです。さらに「原子泉」とは原子を噴水のように打ち上げる系のこと。「原子泉を備えた原子干渉計」で有名なのは時計です。その精度たるや、10^-15=1,000,000,000,000,000分の1を超えるのだそうです。いやー、すさまじい。今回測ったのは時間ではないですが、こんなもので重力を測ったんだから、それはそれは精度がよさそうです。

それで、結果はどうなったかというと、「ローレンツ不変性を否定する結果は出なかった」ということです。ところで、この結果は実験を行った研究者にとって「めでたし、めでたし」なのでしょうか?これも憶測ですけど、本当はローレンツ不変性が破れて欲しいと思っていたんじゃないでしょうか?その方が、この問題の議論でこの分野が白熱しますから、そのきっかけを作った大発見と呼ばれるようになるでしょう。たぶん、この研究グループは係数が0でないと言えるまで、測定精度を上げ続けてやる位の気迫で臨んでいるんじゃないでしょうか。でも、どこまで精度を上げても本当に係数が0ということもあり得ます。大変な仕事です。
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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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