すばる望遠鏡400億円は高いか、安いか?(前編)

先日、日光東照宮に行って来ました。
眠り猫、鳴き竜、見ざる言わざる聞かざるはもちろんのこと、犬がいて、鶴がいて、すずめがいて、象がいて、獅子がいて、鳳凰がいて、バクがいて...

クマがいないじゃないかー(怒)

取り乱しましたが、本題です。

今回は日本が誇るすばる望遠鏡について調べてみたいと思います。すばる望遠鏡はハワイのマウナ・ケア山山頂にある日本の大型天体望遠鏡です。ウィキペディア情報では総工費約400億円をかけて製作されたそうです。1999年に観測を開始(「ファーストライト」と言うらしいです。かっこいい言い方ですね)、今年で10年になるということで、雑誌「パリティ」の10月号でも特集されています。今回は、その内容はさておいて、総工費400億円の妥当性を中心に考えてみたいと思います。

というのは、新政権の下で「事業仕分け」なるものが行われていますよね。国の事業を精査して、無駄な事業を廃止または見直ししようとしています。大型望遠鏡についてはよく知りませんが、文部科学省の科学技術関係の大型プロジェクトがリストアップされているようです。私の勤め先に至っては、研究所の存亡自体が問題になっているように新聞からは読み取れます。もっとも、私のような下っ端の人間には日々の仕事をこなす以外どうしようもないのですが。こんな時期ですから、研究費について考えるのはとてもタイムリーだと思います。まあ、私のような立場の人間が書いても、どうせ偏った意見になるような気もしますが。

とりあえず、すばる望遠鏡について簡単な説明を。ネット上でも、公式ホームページなり、ウィキペディアなり、いろんな人のブログなり、いっぱいあります。すばる望遠鏡では直径約8mの凹面鏡(主鏡)で光を集めます。この望遠鏡の大きな特徴の一つは、主鏡の焦点の位置に視野補正レンズ系を配置した「主焦点カメラ」と呼ばれる観測装置で、画角の広いカメラを構成することができるのだそうです。これを作るには、望遠鏡の先端に重い装置を装備しなければならず、非常に高度な技術を要求されるようです。広い領域を一度に観測できるので、暗くて数の少ない遠い銀河の観測では、すばる望遠鏡は「一人勝ち」なのだそうです。現在観測されているなかで最遠の128.8億光年の銀河をはじめ、ベストテンは全てすばる望遠鏡によるものだそうです。宇宙の始まりのビッグバンが137億年前と推定されているので、ビッグバンまであと約8億光年ですか。ずいぶん近づいているのが分かります。考えてみれば、大型望遠鏡の製作に必要不可欠な技術は光学、機械、電機といった日本の民間企業の強い分野ですから、すばる望遠鏡は日本の技術力の結晶といえるんじゃないでしょうか。最遠方銀河のほかにも、いろいろと重要な成果を出しているようです(下記補足参照)。おそらく、これ以上の成果を望まれてもどうしようもない、というくらいに成果を出し続けているといってよいでしょう。

すばる望遠鏡は研究費について考えるには最適な対象だと思います。まず、額がでかいです。そして、成果も出ています。しかしながら、総工費に見合った経済効果はないでしょうし、夢のような製品に繋がるような将来展望も現時点ではないでしょう。したがって、日本で科学をやるときに一般の方々に説明するのが最もやっかいな「それがなんの役に立つのか?」という質問には非常に答えづらいでしょう。それでいて、天体観測が好きな人は少なからずいて、普段ほとんど興味がなくても、ニュースで話題になるような日食や流星群などには、まあミーハーなんでしょうけど、突然興味を持つ人もいます。つまり、すばる望遠鏡は、ほとんど儲かりはしないけど多くの人の興味は引いているという、いかにも科学らしい分野の重要な実験装置で、しかもしっかり成果を出している、といったところでしょう。アメリカンエキスプレスカードのコマーシャルで言っているようなプライスレスな研究成果のために、いったいいくらつぎ込むべきなのか?プライスレスと言っても無尽蔵にお金を使えるわけではないですし、難しい問題だと思います。

別に科学技術の大型プロジェクトに限ったことじゃなくて、例えばダムなどの公共事業でもそうなんですが、街の人々に「総工費400億円かかりましたが、どう思われますか?」とインタビューしたら、「えー、そんなにかかってるんですかー。高すぎますよ。」って答える人は多いでしょう。でも、こういう方々のほとんどは、「じゃあ、いくらならよいと思いますか?」と聞かれてもまともに答えられないでしょう。普段の生活では想像できないような金額だからといって、何でもかんでも「高い」と言わずに、適正かどうかを冷静に考える癖をつけておくのは必要なことなんだと思います。とはいえ、私にはすばる望遠鏡の適正価格なんてさっぱり分かりません。分かる人はいるのでしょうか?

ダラダラ書いていたら長くなってしまったので、次回に持ち越します。次回は、こういう基礎科学の大型プロジェクトの必要性について、私がおぼろげながら思っていることを書いてみます。

補足:すばる望遠鏡の成果(パリティVol. 24 No.10 2009-10, p. 5より)
大規模構造が宇宙初期にも検出できたこと、ダークマターのつくる構造の中で銀河形成が進んだ証拠が得られたこと、小さな円盤銀河が合体して楕円銀河が形成された証拠を見つけたこと、さまざまな形の原始惑星系円盤があるとわかったこと、小惑星の大きさの分布から月のクレーターの起源が分かったこと。
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バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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