光とナノテクとバイオの融合

今日は「応用物理」第78巻第12号(2009) pp.1118-1122から。以下、タイトルと要旨のみ、引用します。

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生体分子のマイクロ/ナノ分光イメージング

藤田克昌・河田聡

光学顕微鏡による顕微観察の最大の利点は、生物試料を生きたまま低侵襲により観察できる点である。さらに近年では、振動分光法を利用して試料内の分子を無標識で同定・分析しながら観察する技術が発展している。本稿では、ラマン散乱と表面増強ラマン散乱を利用した、マイクロからナノメートルスケールでの分子イメージング技術について紹介する。
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光を使って生体分子を見てみようという話なのですが、単に理科の実験で使うような光学顕微鏡で見ようというのではありません。光を生体分子に照射すると、照射光とはわずかに異なる波長をもつラマン散乱光と呼ばれる光が生じます。ラマン散乱光の波長が生体分子の構造、環境、周辺環境によって異なることを利用して、散乱光のスペクトル(どの波長の光が多く含まれているか)を測定し、分子を分析するとのことです。このとき、サイズの小さい光を当てて、なるべく微小な領域を細かく観測したい。凸レンズでいくらでも光を絞れそうに思えますですが、実は回折限界と呼ばれる原理的な限界があって、通常の伝搬光の場合には数百nm(1 nm = 100万分の1mm)くらいまでしか絞ることはできません。これでもすごく小さいとは思いますが、分子を一つ一つ見ようと思ったら、もっと細かく観察する必要があります。そこで、ナノスケールの微細構造をもつ金属表面に励起されるプラズモンなるものを利用するのだそうです。プラズモンが励起されると微細構造のまわりに増強された光ができ、その光のサイズが微細構造のサイズと同じくらいになるので、十分に小さな構造を作ってあげれば回折限界を打破できるということだと思います。この実験では、先端を尖らせた金属を用いて、空間分解能15 nmを得ているそうです。また、ナノメートルサイズの金属微粒子を細胞の中に入れて、細胞の中身を観察する実験についても紹介されています。

ちなみに、著者の河田先生といえば、体長8ミクロンの牛の模型を作ったことでも知られていますhttp://www.eng.osaka-u.ac.jp/ja/prospective_s/work/06.html。ギネスブックにも載っているそうです。私も一応研究者の端くれですけど、こんなのを見ると理屈抜きに、「やっぱ現代の科学技術はすごいなあ」と、素人のように思ってしまいます。

また、光の回折限界を打破する学問領域として「近接場光学」とか「ナノフォトニクス」とかいう領域がございます。すでに、近接場光学顕微鏡や近接場光リソグラフィー装置なるものも実用化されたり、されいようとしていたりのようです。すでに多くの成果を出してますけど、今後も期待が持てそうです。

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バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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