生命はどこまで凄いのか?

サッカーのバラック選手がドイツの古巣レバークーゼンに移籍するそうです。
http://jp.uefa.com/uefaeuropaleague/news/newsid=1501478.html

もう33歳ですが、まだまだドイツ代表でも頑張るつもりのようです。

そうですよね。自分で限界作っちゃいけませんよ。

それに引き換え、私はこの間のフットサル大会でも"Ballack"のネーム付きのユニホームで無得点記録更新中…

ほんとにご本人に申し訳ないと思いつつ、本題です。


今日はパリティ、Vol. 25, No.06 pp.4-11.「生命(いのち)の量子論 ポール・デイヴィス著(小野嘉之訳)」から。

生命の不思議を解明するにはミクロの世界を記述する量子力学が不可欠であり、また、生命は量子力学特有の物理現象をたくみに利用しながら進化を遂げてきたのではないか、という内容です。以下、ごく一部分だけ引用します。

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しかし、なぜ量子力学が、分子の基本構造や相互作用の説明以上の関わりを生命に対してもたなければならないのだろうか?一般的な議論の一つは、量子力学的効果が、古典力学では時間がかかり過ぎたり不可能だったりする過程を可能にするのに有用であるというものである。物理学者にとって、離散性、量子トンネル効果、重ねあわせ、からみ合いなどが、新奇な予期しない現象を引き起こすことは日常的である。生命は35億年もかけて、問題を解き、効率を最適化するという作業を続けてきている。もしも、量子力学が生命のそのような活動を助長することができ、新たな可能性を開くことができるのであれば、生命がその事実を発見し、チャンスを利用しただろうということはありうる。生物学の基礎的過程が分子レベルで起こっているとすれば、量子効果を利用しているということを一概には否定出来ないと思われる。
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量子力学的効果を利用した情報通信やコンピューターは、近年非常に活発に研究されている分野です。普通こうした実験を行うためには、絶対零度近くまで冷やしたり、可能な限り外乱からの影響を除去したシステムを構築したりするなど、日常生活ではありえない様な系を高度な実験技術を駆使して作るものです。それなのに、我々の体を含めて、自然界の生命が量子力学を駆使しているのだとすれば、それは驚きです。この文献を読む限り、そうはっきりした証拠が体系的に整ったわけではないと思いますが、少なくとも萌芽的な研究として、始まってきたということです。

量子力学特有の現象について色々述べるのは省かせて頂きますが、量子力学というのは、物体がどこにあってどう動いているのかが原理的にはっきり決められなかったりして、なんだかよく分からないけど、現象は確かにそうなっているという、とても不思議な理論です。(お前がただ分かってないだけと言われそうですが、そう思っている専門家も結構いるんじゃないかと思うんですけど…。)やはり35億年の歴史というのは物凄いんですかねえ。別に生命体が量子力学的な効果を利用しようとしているわけでもないのに、とにかく効率を上げようとしたら無意識のうちに量子力学的な効果に至っていたなんてことが、本当にあるんでしょうか。まあとにかく、どこから手をつけていいかすら私にはよく分かりませんが、面白そうなテーマです。

外乱の影響の少ない系(分かりやすい系)を人工的に創りだして理解を深めていくほうが良いのか、外乱の影響をモロに受けているはずだけれども量子力学的な効果がすでに有効に利用されていると信じて生命体から攻めて行くのか、研究者の趣向が現れるんでしょう。おそらく前者のほうが、一つずつ理解を深めながら進んでいけそうです。後者だと、目新しいことが出てきても、どういうメカニズムで現れるのかさっぱり分からない、なんてこともありそうです。でも、誰も考えつかなかった量子力学的現象がヒョッコリと見つかるかもしれません。

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光と音でガン治療

先日、妻が遠出中に定食屋に行ったら、宇宙飛行士の毛利さんを見かけました。

さすがつくばですね。あんな所にいるんですね。

あとでなんでサインを貰わないんだと妻に怒られましたが、本題です。

今日は、パリティ、Vol. 25 No.03 2010-03から。以下タイトルとちょっとした要旨のみ、引用します。

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光音響変換の医療応用 がん診断からがん治療へ

スタニラフ・エメリャノフ、ペイ=チー・リー、マシュー・オドネル

光が音を出す現象を利用した高感度医療用画像技術が開発され、がん診断と治療への応用が期待されている。
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光が音に変わる、というのは、稲妻が光って雷鳴がとどろくのが例だそうですが、こうした光音響変換をがん治療に応用する研究が進められているとのことです。

基本的にパルスレーザーを照射することによって媒質の熱状態が変化し、それが温度、密度、そして圧力の変化を起こすことによって超音波がでて、それを観測するとのことです。この手法だと、光吸収係数の違いがコントラストになります。他の方法、例えば超音波を照射して密度や圧縮率といった機械的性質の違いを得る超音波像とは全く異なっているそうです。光音響画像と超音波画像を両方取れる装置があり、前者では例えば血液中の酸素などを検出でき、後者では血流や組織の硬さなどを得ることができるそうです。

この光音響法を応用して、がん細胞を破壊する研究が進められているとのことです。まず、10万分の1 mmくらいの金のナノ粒子にがん細胞に対する抗体を固定させておき、ナノ粒子を細胞の中や表面に蓄積させます。金ナノ粒子は光吸収材として働くので、レーザーを照射することでがん細胞だけが加熱されるとのことです。また金のナノ粒子は、特定の波長付近で共鳴的に吸収が大きくなる性質があり、その波長はサイズと形状で変わりますから、異なるサイズや形状を持つ金粒子を使い分けて、より選択的に観測したり、破壊したりもできるようです。

私も少しだけ金ナノ粒子を使ったことがあります。下手をすると金粒子が寄り集まって塊になってしまうこともあったような。そうなってしまうと、共鳴の効果がなくなりますから、そこはまあ、うまいことやるんでしょうなあ。「超音波・光音響画像と標的治療との複合システムには輝く未来がある。」と書いてあります。私たちの命に直結するテーマですから、ぜひ進展を期待したいものです。

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粘菌の方を支持したい

パンダのゲノムが解読されたそうです。
http://www.natureasia.com/japan/nature/updates/index.php?id=76140&issue=7279

クマ科ですから他人事とは思えません。次はクマゲノムをお願いします。

それでは本題です。

今日はphysics todayのphysics Updateから、"Planes, trains, and slime molds"というタイトルの記事について。
http://blogs.physicstoday.org/update/2010/01/planes-trains-and-slime-molds.html

リンク先の図を見て頂たいのですが、東京近郊の地図になっております。東京の位置に粘菌をおき、主要な鉄道沿線の都市の位置にエサを置いて、時間とともに粘菌がどう広がっていくかを観察したのだそうです。1日たつと、電車網と似たようなネットワークが張られたとのことです。

電車網をデザインする人がコストと効率的かつしっかりとしたシステムとの兼ね合いを考えているように、粘菌もエサをとるために必要な原形質の量と傷に対する耐性との兼ね合いをバランスしなければならないので、似たようなネットワークが張られるのでしょう。人間が考えるのと、粘菌が自然に動くのとが一致するんですから、やっぱり自然はすごいなあと思います。また、粘菌の動きに改良を加えた数値シミュレーションでパラメータを調節すると、もっとコスト効率の高いネットワークを構築できるとのことです。

この研究では先に街があって、そこに電車網が張られることを想定していると思いますが、実際には電車網があるから街が発展したということもあるはずです。しかし、それでも両者が一致するというのがなかなか興味深いですね。

ところで、茨城県つくば市に住んでいる私からすると、例えば群馬の草津温泉に行こうとすると、(車なのでちょっと違うかもしれませんが)一度東京の方に出てから群馬に向かわねばならないのが不満です。それで、図を見てみると、なんと北関東を横断するネットワークが張られているじゃありませんか!粘菌って素晴らしいですねえ。賢いですねえ。実社会の方も、粘菌を見習ったわけではないでしょうが、北関東道や圏央道といった高速道路網が建設中です。早くできてくれないかなあと心待ちにしております。

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光とナノテクとバイオの融合

今日は「応用物理」第78巻第12号(2009) pp.1118-1122から。以下、タイトルと要旨のみ、引用します。

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生体分子のマイクロ/ナノ分光イメージング

藤田克昌・河田聡

光学顕微鏡による顕微観察の最大の利点は、生物試料を生きたまま低侵襲により観察できる点である。さらに近年では、振動分光法を利用して試料内の分子を無標識で同定・分析しながら観察する技術が発展している。本稿では、ラマン散乱と表面増強ラマン散乱を利用した、マイクロからナノメートルスケールでの分子イメージング技術について紹介する。
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光を使って生体分子を見てみようという話なのですが、単に理科の実験で使うような光学顕微鏡で見ようというのではありません。光を生体分子に照射すると、照射光とはわずかに異なる波長をもつラマン散乱光と呼ばれる光が生じます。ラマン散乱光の波長が生体分子の構造、環境、周辺環境によって異なることを利用して、散乱光のスペクトル(どの波長の光が多く含まれているか)を測定し、分子を分析するとのことです。このとき、サイズの小さい光を当てて、なるべく微小な領域を細かく観測したい。凸レンズでいくらでも光を絞れそうに思えますですが、実は回折限界と呼ばれる原理的な限界があって、通常の伝搬光の場合には数百nm(1 nm = 100万分の1mm)くらいまでしか絞ることはできません。これでもすごく小さいとは思いますが、分子を一つ一つ見ようと思ったら、もっと細かく観察する必要があります。そこで、ナノスケールの微細構造をもつ金属表面に励起されるプラズモンなるものを利用するのだそうです。プラズモンが励起されると微細構造のまわりに増強された光ができ、その光のサイズが微細構造のサイズと同じくらいになるので、十分に小さな構造を作ってあげれば回折限界を打破できるということだと思います。この実験では、先端を尖らせた金属を用いて、空間分解能15 nmを得ているそうです。また、ナノメートルサイズの金属微粒子を細胞の中に入れて、細胞の中身を観察する実験についても紹介されています。

ちなみに、著者の河田先生といえば、体長8ミクロンの牛の模型を作ったことでも知られていますhttp://www.eng.osaka-u.ac.jp/ja/prospective_s/work/06.html。ギネスブックにも載っているそうです。私も一応研究者の端くれですけど、こんなのを見ると理屈抜きに、「やっぱ現代の科学技術はすごいなあ」と、素人のように思ってしまいます。

また、光の回折限界を打破する学問領域として「近接場光学」とか「ナノフォトニクス」とかいう領域がございます。すでに、近接場光学顕微鏡や近接場光リソグラフィー装置なるものも実用化されたり、されいようとしていたりのようです。すでに多くの成果を出してますけど、今後も期待が持てそうです。

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ダイヤモンドとインフル検査?

昨日は妻が入る前にお風呂のお湯を抜いてしまいました。

しばらく逆らえないでしょうが、本題です。

今回は応用物理学会誌2009年10月号pp.961-967から毛色の違う話題を。以下、タイトルと要旨のみ引用します。

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ダイヤモンドナノワイヤ電極を用いた高感度DNAセンサー

        上塚 洋

ダイヤモンドが優れた電気化学的性質を有していることを利用した電気化学的DNAセンサーに関する研究を行っている。ここでは、新しく開発した微細加工技術を用いて製造したダイヤモンドナノワイヤ電極表面によるDNA検出について紹介する。ナノワイヤ構造を用いて電気化学的な表面装飾を行うことにより、表面のプローブDNA分子密度を制御し、ナノメートルオーダーでの間隔で配置することに成功した。このようなDNAセンサー上で従来のものより2~3けたの高感度化に成功し、最高検出感度2 pMを達成した。また30回以上にわたるハイブリダイゼーションサイクルでもシグナルは劣化せず、ダイヤモンドDNAセンサーの高安定性を実証した。
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物理の専門家がバイオの分野に参入または転向することが最近増えてきているように感じます。そういえば、原子のレーザ冷却でノーベル賞を取ったSteven Chu先生も最近バイオ方面の研究をしていたように思います。大胆ですけど、こういうことも必要なんでしょうね。物理の専門家がバイオの分野でやるべきことは多いのでしょう。

さて、本編を読んでいくと、まあ見慣れない言葉がたくさん出てきます。ハイブリダイゼーション、デナチュレーション、クロスリンカー分子、Sulfo-SMCCなどなど。内容自体は意外とシンプルな気がしますが、私の専門とは全く分野がかみ合っていません。専門外のテーマを取り上げるのがこのブログの主旨ですから書いてはみますが、以下、「私はこう読み取った」ってくらいなものだと思ってください。

この研究では、ダイヤモンドの高硬度、化学安定性、表面装飾性、電極特性を利用している。ダイヤモンド基板上にDNAなどの生体物質を強く固定できる、電極として利用したときバックグラウンド電流が少なくなるなどの利点があるそうです。

さて、このDNAセンサーの原理ですが、まず1本鎖のDNAをダイヤモンド基板上に固定しておきます。そして、イオンを含んだ溶液にこの基板を入れて電流を流すのだろうと思います。このとき、溶液中に基板上のDNAと相補的なDNAがあると、お互いが結びついて2本鎖DNAになります。ここで、1本鎖のDNAよりも2本鎖のDNAが基板に付いている時のほうがDNAがダイヤモンド基板を覆う面積が増えるのでイオンが基板に到達する効率が下がります。そのため、電流が減少して溶液中のDNAが検出されるという仕組みだそうです。

さて、ダイヤモンド平面基板に一本鎖を固定するとどうなるかというと、むらがでたり、表面が完全に覆われて基板が電極としての用をなさなくなるから本来の性能を発揮することができない。そこで、10 nm=1/100,000mm位の間隔でDNAを配列すればよい、ということで基板に10 nm間隔のギザギザをつけたのだそうです。どうやったかというと、直径10 nmのダイヤモンド微粒子を基板上にばら撒いて上からドライエッチングで削るのだそうです。本編を読む限り、割と簡単に出来ますよ、ってアピールしているように読み取れます。確かに、リソグラフィー技術とか使ってないので、そんなに手間がかからなそうに見えます。結果として、金電極を用いたものと比較して100-1000倍の高感度化に成功したのだそうです。

本編では展望として、新型インフルエンザの検査についても言及しています。この手法がインフルの検査に使えるとは書いていないように思えますが、簡便に使えて短時間で検査できる手法を私も心待ちにしております。

さて、私の妻の専門は分子生物学なるバイオの分野なのですが、この手の話をしていると、当たり前ですが「完敗」です。昨日風呂を抜いてしまった引け目でちじこまりながら書きました。まあ、いいんです。どうせいじめられるの大好きだから。



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プロフィール

バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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