大チョンボと呼ばないで

排水管のヌメリ取りの説明に、ヌメリ取りを排水口に入れたあとにコップ1杯分のぬるま湯を入れろと書いてあったので、温水の蛇口をひねってお湯が出るのを待っていたら、全部流れてしまいました。

相変わらずの抜けっぷりが私らしいと思いつつ、本題です。


今日は、ニュースから。http://www.cnn.co.jp/fringe/30005722.html
以下引用します。

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超光速ニュートリノ、装置に欠陥判明 実験結果に疑問浮上

(CNN) スイスにある欧州合同原子核研究機関(CERN)の国際共同研究グループOPERAが昨年、素粒子ニュートリノが光より速く飛んだとする実験結果を公表し、科学界に衝撃を与えた問題で、CERNは25日までに時間計測に使った光ファイバーケーブルに緩みがあったなどの欠陥が見付かったと発表した。

実験結果が間違っていた可能性を示す装置の不具合の確認となっている。CERNは、この緩みが実験結果にどう影響を与えたのかを検証する実験を今年5月に実施する。

緩みが見付かったのは、ニュートリノの速さを厳密に計測するために必要な全地球測位システム(GPS)とコンピューターを接続する光ファイバーケーブルの部分。ケーブルは外部のGPSのシグナル作動とOPERAの基本時計を同時に動かすためのものだが、CERNは緩みの影響で時間計測が正確に出来ず、ニュートリノの速さを過大評価した可能性があるとしている。
・・・・
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世紀の大発見は世紀の大チョンボだったのか?と思えてしまいますが、まあこんなもんです、特に精密測定というのは。あくまで私の経験上ですが、どんなにアイデアあふれるエレガントな手法を用いようと、最終的にはこういう地味なところが効いてくるんです。大きな装置を動かすのはチェック項目が大量にあるし、そもそもチェック項目をくまなく挙げることが大変なことです。

たいていのニュースや論文を読むと、いいアイデアを思いついてやってみたら良い結果が出た、というストーリーになっていますが、実際には裏で地味な仕事を積み重ねています。そういうのは部外者が読んでも何も面白くないので、あえて苦労を表に出さないようにするものです。実際、大学院入りたて位のころは、大半の時間をつぎ込んで苦労してきた話を研究発表で長々と説明したくなるものですが、退屈になるのでやめなさいと指導された記憶があります。この光ファイバーの緩みの話はニュートリノも相対性理論も関係ない低レベルの話ということになるのでしょうが、生々しい現場感があって個人的には好感が持てます。

細かい状況はよくわからないのですが、実験がうまくいかない理由を挙げ出したらキリがないのが普通なので、装置を入念に確認してみてこの位しか不具合が見つからなかったというのは、私は上出来だと思います。この実験で厄介なのは、単純にニュートリノの速度を測る実験だということです。「これが出来たら大発見」的なものなら、出来てしまえば後で多少の装置の不具合が見つかっても、「出来たんだから、この不具合はほとんど効かないってことでしょ」ということで丸く収まります。(しかし、うまくいかないと何もかもが疑わしくなる、という大変さはありますが。)その一方で、この実験に関しては、「出来たんだから正しい」とは全く言えないのです。やはり、複数の独立した実験設備で検証する必要があるのでしょう。

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アイデアの出しどころ?

電気屋にiPadを見に行ったら、説明してくれた店員がずっと「ブロバイダー」と言っていました。

最初適当に聞き流していたけど、話が長くなってくると「早いうちに指摘しておけばよかったかな。今更指摘してもなあ」と思い、結局話が終わってしいました。

このような事を繰り返して、あの店員は「ブロバイダー」と言い続けてきたのだろうと思いつつ、本題です。


今日は光の速さについて。

ちょっと前にニュートリノの速さが光の速さを超えているという実験結果が出た、という話がありましたが、光の速さの測定に関する歴史的な経緯が、「歴史をかえた物理実験」という本に書いてあったので、その辺のお話を。

アリストテレスの頃は光速は無限大であると信じられていたようですが、1600年代になると木星の衛星イオが木星の影に隠れる周期が年月と共に変動することがわかり、その後レーマーという人が、それは光の速さが有限であるからだと気づいたそうです。

そして、実際に地球上で光の速さを測ることになるわけですが、秒速約300,000 kmで飛んでいく光の速さを測るわけだから大変です。最初に測ったのは1849年のフィゾーという人だそうです。原理を簡単に言うと、光を約8 km先まで飛ばしてミラーで戻します。そして、光の経路上に歯車を設置して回転させ、高速で光を遮ったり通したりさせます(専門用語で言えばチョッパーのこと)。光が行って帰ってくるまでの間に歯半個分だけ歯車が回転する場合には、光は行きか帰りかどちらかで遮られてしまうので、歯半個分回る間に光が行って帰ってきたのだと分かるわけです。歯半個分回る時間は1秒あたりの回転数から求めて、光を飛んだ距離を割れば光の速さが求まります。

上手いこと測っているわけですが、測定技術やアイデアはどんどん進歩し、光の速さを測るのに長い距離を飛ばして時間で割って求める方法ではなくなっていき、周波数と波長を測定して両者をかける方法に変わって行きました。波長は光の干渉を利用して測り、周波数は2つの波を重ねたときに両者の差の周波数で起こる「うなり」をうまく利用して、カウントできる周波数まで下げていって測りました。1971年にはアメリカ国立標準局のイーブンソンらが、秒速±0.2 kmの精度で光の速さを決定したそうです。

測定技術の変遷をざっくり言えば、「天体観測」→「距離/時間で求める」→「周波数×波長で求める」ということですね。

ニュートリノの場合だと、今「距離/時間で求める」の段階でしょう。でも、天体観測からはニュートリノの速さは光速を超えていないはずなんでしたっけ。ともかく、光のように鏡に反射されて戻っては来ないでしょうし、作ること自体が難しいだけに何か試すにも大変な労力がかかるでしょうから、とても光と同じようにはできないでしょうけど、似たような変遷をたどるのでしょうか?どうなるかは分かりませんが、ニュートリノの速さの精密測定は今後要求されてくるのでしょうから、今がアイデアの出しどころかもしれません。もっとも、私はアイデア以前にどんなものかを理解しきれていないのですが・・・

ちなみに、今はメートルを基準にして光の速さが測られているわけではなく、光の速さを299792458 m/sとして、それを基準にメートルの単位が決まっているので、光の速さを精度〇〇で測るという事自体がおかしな話になってしまいます。

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理屈通りでも価値あり

ミトコンドリアは緑ではないそうです。

明らかに日本語ではないのに、緑なのだろうと思っておりました。

実際には無色透明で、いろんな色に染められるのだそうです。

言葉のイメージとは恐ろしいと思いつつ、本題です。


今日は、今更のように5月のナショナルジオグラフィックの記事から。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110506002&expand&source=gnews
人工衛星に正確なジャイロスコープを搭載し、一般相対性理論から導き出される2つの力が理論予測通りであるかを検証したという実験です。

わざわざ人工衛星にジャイロスコープを積んで、1年間で角度が0.0018度だけずれることを測定するという、途方もなく精密な実験です。ほかの文献によれば、ジャイロスコープの形を製作しうる最高のレベルで球形にしたり、超伝導状態にしてジャイロスコープの自転軸に平行な磁場を発生させて超伝導量子干渉計で高感度に測るなど、豪勢な工夫が凝らされているようです。

測地線効果やフレーム・ドラッギング効果についてはよく知らないので、記事に書いてある以上のことは言えませんが、理論通りだったということなので、より相対性理論がより確固たるものになったとはいえるのでしょう。基本的な理論はここまでして正しいことを実証しているからこそ、信頼するに値するのでしょう。

もっというと、相対性理論が教科書に載っていたとしても、実証されていないものは必ずしも自明ではなく、実際にやってみる価値があるということでしょう。公表されるニュースを見ているとほとんど理論通りの結果がでて終わるので、やる必要ないんじゃないかと思われる人も多いかと思いますが。こんなに大がかりな実験ではないにしろ実際に実験している立場から言うと、理屈通りにいかないことは山ほどある様な気がします。まあ、たいていの場合は自分が論理的に導いたはずの理屈が間違っているとか、実験系に不備があったとかいうオチなのですが。ただ、体感的には基本的な理論だって絶対ではないんだろうなとは思います。

最近ニュートリノの速さが光速を超えたという実験結果が出されましたが、そんなことはあるわけないと思ってはいけないのでしょう。もちろん実験上の間違いである可能性もあるでしょうが、実験結果には真摯に向き合う必要があるのだと思います。

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地磁気を大真面目に測る

ロンドンで、サッカー(アーセナルvsストークシティ)を見てきました。

やっぱりプレミアはすごいですね。会場の盛り上がりも以前見たブンデスリーガ以上でした。パスが早くて狂わないからでしょうけど、全体のスピードが上がって、グランドが狭く見えるんです。

また、近所にサッカー場が何面できるか分からないほど広い公園があって、そこで子供からおっさんまでサッカーをやっているんですけど、すそ野が広いなあと思います。おっさんのサッカーに関しては、技術的にというより、当たりの激しさが素人の週末サッカーとは思えません。キャプテン翼の日向君の師匠が昔イングランドと対戦して、フィジカルのすごさに愕然として帰ってきたんでしたっけ?なんか、分かる気がします。

気の弱い私は、ピッチの外に転がってきたボールを2回けって返しただけで、やった気になりました。

これでイングランドじこみとなればよいのですが、本題です。

イギリスのネタと言ってもなかなかないので、Physics TodayのPhysics Updateから。
“Building an atomic geomagnetometer from the ground up“
http://blogs.physicstoday.org/update/2011/02/building-an-atomic-geomagnetom.html
地球全体の地磁気を測る手法についての話です。

地球上に磁場があることは方位磁石でも持ってくれば簡単に分かりますが、地磁気を精密に測ると、資源探索やマントルにおける化学物質の動きなどが分かるらしいのです。

それで、地磁気の分布をはかるアイデアが書かれています。Webページ上の図を見ればだいたい分かりますけど、地球上から90 km上空のナトリウムの層にレーザーを当て、発生した蛍光を地球上で捕らえようというのです。蛍光の強さが、磁場中でのナトリウムの原子の歳差運動の周波数に依存するので、蛍光強度の変化から磁場が分かる、ということのようです。

図に書けば簡単だけど・・、という実験の極端な例でしょうね。想像できかねます。ただそれほどまでに、地磁気分布を測ることが重要なんでしょう。地磁気の場合、もともとある程度の大きさがあって、その微妙な変化を観測しようとするわけですから、特に難しいのでしょうね。小さすぎて検出にかからないものを感度を上げて検出する方が、比較的に楽なのだと思います。

話は少し変わりますが、磁場というのは実験にはやっかいなものです。何もなくても地磁気がある上、電気機器をおけば周辺に磁場が発生するので、場所によってまちまちなことがほとんどでしょう。磁場を遮蔽する箱はありますが、その中に磁場の発生要因があったら元も子もありません。ネジ一本にまで気を使うこともあります。

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長い目で見れば歴史的価値

予備校講師をやっている高校時代からの親友がいます。そんな香川先生がやっているpodcasting mathematicsのイントロが素晴らしいので紹介します。

http://podcastingmath.cocolog-nifty.com/blog/

僕にはこういう才能ないんだよなあ。

受験生ではないのでさすがに内容部分は全部聞いてないですけど、面白くて分かりやすそうです。昔から話術が巧みだったし。

思わずアマゾンでテキストを買いそうになるのをこらえつつ、本題です。


先週末にロンドンの博物館3つ(大英、自然史、科学)を巡ってきました。でかすぎて、とても全部は見切れませんでした。どれも見せ方がうまいなあ、と思いました。決して派手な演出をしているわけではないんですけどね。価値のあるものをありのまま見せている感じが、逆にいいんでしょうね。

3つの中で一番マイナーであろう科学博物館には、昔の実験装置がそのまま展示されていてなかなかおもしろかったです。ファラデーが電磁誘導を発見した時のコイルなんてものもありました。1831年ですと。

いろいろあるなかから、世界で初めて1秒の定義するために使われた原子時計(1955年)について書いてみようと思います。詳しい説明はほかに譲るとして、写真を参照しながら見た目だけの話を。長さは約1.5 mで金属製の棒のようなもので構成されていました。中央に筒があってその中をセシウム原子が通り、入口付近と出口付近で電磁波が照射されるようです。その周りをコイルが取り囲んでいます。

もう動かないだろうし、今はずっと精度の高い時計がありますけど、やっぱり歴史的に重要な代物でしょう。それまで天体観測に基づいて1秒が決まっていたのが、原子という、物理学者が扱うものに置き換わったときの時計ですからね。現在の定義となっているセシウム原子から他の原子に代わる可能性があるそうですが、どっちみち原子であることには変わりないですからねえ。やっぱり展示の原子時計の歴史的価値は高いのだと思います。

重要な実験装置を博物館に展示するのは、とてもいいことだと思います。現在のたいていの実験装置は公金をもとに作られていますから、一般の方々に還元するという意味でも重要だろうし、やってる研究者も扱っている装置がそのうち博物館行きかもしれないと思うと、少し気持ちも違うんじゃないでしょうかね。言うほど簡単じゃないでしょうね。長~い目でみないと、保管するだけでも大変でしょうし。それに一個だけあってもダメ。ある程度数がまとまらないと、迫力が出ませんもん。

セシウム原子時計

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プロフィール

バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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