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単なる微小化から質的変革へ

仕事の帰り道で青信号の横断歩道を渡っていたら、車にひかれそうになりました。

私はいつも動きがゆったりとしていますが、おそらく人生最速の猛ダッシュで逃げて、ぎりぎりで事なきを得ました。やればできるじゃないか。

つくばは歩行者が少なくて、たまに歩行者がいても存在に気づかないようです。つくばにお越しの際は、人がいても車は止まらないと思って行動した方が良いでしょう。

さて、本題です。


今日は、パリティ Vol. 25, No.07 2010-07, pp. 28-35より。以下、タイトルと要旨のみ引用します。

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ナノメカニカル素子の物理と応用

山口浩司

ナノテクノロジーの進展により、きわめて小さな機械構造の研究が盛んに行われるようになった。巨視的力学系としての量子力学的性質や特徴的な非線形現象が出現し、新しい物理が展開する舞台として期待されている。このようなナノメカニカル素子の研究における最近の話題について解説する。
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100万分の1 mm以上1000分の1mm以下くらいの、いわゆるナノメートルサイズの機械についての話です。

機械と言っても、凄い仕掛けがあるわけじゃなくて、例えば、板が横たわっている「梁」を振動子として用いることを言っています。構造は簡単ですが、ナノメートルサイズですから、目はおろか普通の光学顕微鏡では見えないような代物です。

こうしたナノメカニカル素子の量子力学的性質と非線形現象について述べられていますが、ここでは前者に焦点を絞ります。量子力学というと、エネルギーが連続的ではなくとびとびの値を取る、という特徴があります。ナノサイズの梁を作ってあげて、十分に温度を冷やしてあげれば、エネルギーがとびとびの値を持つことを観測できるというのです。そしてつい最近、それが検出されたとのことです。

「ナノテク」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。ナノサイズの構造を調べるどころか、人工的に作れるようになってきたわけです。こうした究極的な微小化によって、半導体素子などが高密度化されてきました。たいていの人がその恩恵を受けています。

しかし、微小な世界では、量子力学という我々の日常とはちがう物理によって支配されています。ざっくりいえば、物体の波としての性質が露わになってきます。ナノサイズまで突入すると、量子力学が支配的になるはずです。

しかし、私が見る限り、実際には量子力学を常に考えながらやる必要があるナノテク関連の実験は、今のところそれほど多くない気がします。もちろん、実験の原理を理解するのに量子力学は必須であることは多いですが。逆に言うと、量子力学を深く理解したところでナノデバイスは作れないと思います。それはかなりノウハウなどが重要な分野だと思います。

これから変わっていくんでしょうか?これまでのように実験する人と理論に詳しい人は分業でやっていくのでしょうけど、ナノテクの実験屋やナノデバイスを作る人も量子力学を操れるようにならなきゃいけなくなる時代が来るのかもしれません。

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蓮の葉っぱにもナノテク

先日ETCを取り付けたのですが、装置を購入したお店が思い出せず、

「スターバックス…ピザハット…あ、イエローハットだ!」

同業他社のオートバックスから食べ物を伝って車屋に戻るんですね、

と、しょうもないことに気づいたところで、本題です。

今日は応用物理学会誌、第79巻第3号(2010) pp.248-252から。以下、タイトルと要旨のみ引用します。

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超はっ水・超親水技術の進展

   高井 治

蓮や里芋の葉が、水滴をコロコロはじいているのを見たことがあるでしょう。水をはじく表面の性質を「はっ水性」と呼んでいます。逆に水がベタッと濡れる表面の性質を「親水性」といいます。はっ水性の中で、特に蓮の葉の上の水滴のように、水滴がコロコロした状態を「超はっ水性」と名付けています。蓮の葉の表面に似た表面を人工的に作製すれば、超はっ水表面が得られるわけです。このような表面の応用は広く、いろいろな分野で期待されています。ここでは、透明な超はっ水膜の作製と応用、また超はっ水/超親水パターン化構造と応用について述べます。
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はっ水性というのは、普通に生活していてよく目のあたりにすることですし、実用上からもとても重要だと思うのですが、意外とよく分かっていないことも多いのでしょう。そもそも、はっ水性を示す物理量や単位って、聞いた事ないですし。実際には、水滴をおいたときの表面と水滴の接線がなす角度を「接触角」とよんで、はっ水性を定量的に評価しているそうです。蓮の葉のような超はっ水性を示すものだと、接触角が150度以上に及ぶのだそうです。もうほとんど水滴が球体の状態で乗っかっている感じですな。

はっ水性は、表面の細かな突起に起因しているそうです。例えば、蓮の葉の場合だと、表面に10ミクロンくらいの間隔で規則的に突起が存在していて、更にその突起を細かく見てみると、ナノメートルサイズの小さな突起の集まりになっているとのことです。自然というのは凄いものです。こんな構造やメカニズムを何も参考にせずに人間の頭脳だけで考え出したとしたら、もう、天才としか言いようが無いでしょうな。

本文では、人工的に透明な超はっ水膜を生成する技術や、はっ水性を利用した立体的細胞培養などについて書かれています。透明な超はっ水膜に関しては、有機シリコン化合物から気相中での反応によりナノ粒子的な酸化シリコンを合成し、透明な基板上に堆積させていくのだそうです。ただ、通常凹凸があると光を透過せずに散乱してしまいますので、うまいこと凹凸を調整して、我々の目で見える波長の可視光を散乱しないようにするのだそうです。本文では結構あっさりと書かれていますけど、ここら辺に難しさやノウハウが隠れているようにも思えます。

応用範囲は広いでしょうねえ。ワイパーのいらない車についても言及されていますが、素晴らしいでしょうね。他にも、濡らしたくないものはいっぱいありますから、いろいろと面白そうです。今後の進展が楽しみです。

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カーボンナノチューブをどう使う?

バレンタインのチョコレートといって妻が買ってくれたJean-Paul Hevinの高級チョコレートを妻が食べてしまいました。

あとでコアラのマーチで穴埋めして欲しいと思いつつ、本題です。

今日は、雑誌パリティ、Vol. 25 No.01 pp.10-12から。以下、一部を引用します。

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世界最小の白熱灯
ナノ世界でのプランクの法則

加藤雄一郎

 …

・一本のナノチューブで作った白熱灯

米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のグループがつくった世界最小の白熱灯は、たった一本の多層カーボンナノチューブだけでできている。カーボンナノチューブは炭素を六角格子状に並べたグラフェンを筒状に巻いた構造をもち、筒が1層のみのものを単層カーボンナノチューブ、何層もあるものを多層カーボンナノチューブという。UCLAのファン(Y. Fan)たちは、直径13 nm, 11層からなるカーボンナノチューブを1本だけもってきて、電極を両端につけて長さ1.4 μmのフィラメントとした。これに十分大きな電流を流せばジュール熱により高温になり、熱放射が起こる。可視光領域でも十分な光量が出ていて、まさにナノスケールの白熱灯である(余談だが、肉眼でもみえるという話である)
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カーボンナノチューブというのは、(現在)産業技術総合研究所および名城大学の飯島澄男先生によって発見された、直径数十nm(1 nm = 100万分の1mm)以下の炭素でできたチューブです。このとてつもなく細いチューブで、白熱灯を作ったと言うんです。このさきの本文では、黒体輻射プランクの法則という、量子力学を生む上で非常に重要だった事柄について述べられています。プランクの法則は物体のサイズが放射の波長よりも十分に大きいことを仮定して導かれているようで、こんな小さい物体からの黒体輻射がプランクの法則を満たすのか、という議題で進んでいます。結果だけを言えば、彼らの実験条件の範囲内ではプランクの法則を満たしている人のことです。

まあ、本文の内容はここら辺で置いておいて、一体この白熱灯が何の役に立ちそうかをこの分野の素人の私なりに考えてみます。まず、これを一般家庭の照明に使うことは考えられないでしょう。ナノの世界での光として用いるんでしょうけど、ナノのサイズで光るものといえば、半導体量子ドットというものがあります。生体分子もナノサイズで光るものの一つでしょう。特に光の単色性という点では半導体量子ドットに分があるんじゃないかと思います。カーボンナノチューブがそう特別かと考えると、私にはよく分かりません。

しかし、半導体量子ドットは基板の中に生成されるもので、狙った場所に作ることが難しいですが(最新の情報を知らないので今は違うかもしれません)、カーボンナノチューブは単独でできるはずですし、高精度に操作する技術もありそうですから、そいつらを基板の上に一個ずつ配置することができそうな気がします。だからどうしたと言われると答えられませんが、ナノの領域で狙いを定めて光と物質を相互作用させるような研究には向いているのかもしれません。

以上、勝手に使い道を考えてしまいました。おそらく専門家間では、もっとすごいことを考えているんじゃないかと思います。

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プロフィール

バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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