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400年近く解けなかった宿題

先週モルジブに行ってきてしまいました。

やっぱり良かったです。海は青いし、サンゴ礁の周りに熱帯の魚たちがいっぱいいて。

ほんと、別世界です。

でも、ダイビングの日本人インストラクターによると、ここ2年くらいで日本人客が激減しているのだそうです。

円高とはいえ、不景気ですからねえ。

いつになったら回復するんだろうと思いつつ、本題です。


今日は面心立方格子について最近知った話を。

面心立方格子に関しては、確か高校の化学で出てきたと思います。忘れてしまった方も多いでしょうし、そもそも知らない方も多いでしょうが、とりあえずウィキペディアhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%A2%E5%BF%83%E7%AB%8B%E6%96%B9%E6%A0%BC%E5%AD%90を参考にしてください。

この構造が最密充填、すなわち同じ半径の球を箱に詰めていったときに最も密度が高くなる構造だと、昔から言われているし、そう教科書にも書いてあったような…。少なくとも、これが最密充填だと専門家もほとんどの人が疑わなかったはずですが、実はこれが数学的に証明されたのはごく最近の1998年なのだそうです。予想したのはあのケプラーで1611年のことだったそうですから、400年近くの間、多くの人にそうに違いないと思われていながら、証明されなかったようです。

しかも、この証明というのも、コンピューターを使ってしらみ潰しに可能性を潰していって、「さすがにここまで探してこの構造よりも密度が高くならないんだから、この予想は間違いない」という感じの証明なのだそうです。普通、他の自然科学の検証と違って数学の証明だと、「これより高密度になる構造が考えつかない」ということだけでなく、「未だ考えついていない構造が登場したとしてもこれより高密度になることは論理的に絶対に有り得ない」ということが要求されますから、このケースは珍しくて、かつ、正直言ってあまり美しくない証明と言っていいかと思います。

これだけ科学技術が進歩しても、400年前からの宿題がつい最近まで解けなかったんだから、科学というのは不思議なものです。

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20年ぶりの大フィーバー

今日はガラにもなく新国立美術館のハプスブルグ展に行ってきました。
ものすごい人だかりで、絵を見に行ったのだか人を見に行ったのだかよくわからない状況でした。

名画の中に、「ケレスとバッコスがいないとヴィーナスは凍える(スプランゲル作)」という絵がありました。
絵画に疎い私としては、このタイトルが理屈抜きに気になるのですが、本題です。

今日は日経サイエンス、2009年11月号p.48-57から。同じトピックが日本物理学会誌にも特集されていましたが、こちらの方が読みやすそうだったので。以下、タイトルと簡単な要旨のみ、引用します。

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高温超電導  鉄が握る解明のカギ

G. P. コリンズ

絶対温度50 Kを超える温度で超電導になる新たな鉄系化合物が発見された。高温超電導をめぐる20年来の謎を解く手がかりを与える成果だ。より高い温度で超電導になる物質の探索が再び始まった。
******************************************

超電導というのは、物質の温度を低くしていくとある温度を境に電気抵抗が急激にゼロになる現象のことです。また、超電導体を用いて超強力な磁石を生成することができます。日本で何年も前から開発が進められているリニアモーターカーは、こうした強力磁石を利用したものです。そのほか、医療現場で体の内部を撮像するのに使うMRIに用いる強力電磁石も超電導体の応用例だそうです。

この超電導体ですが、とにかく冷やさなければならないという欠点があります。元々は温度4 K(-269 ℃)くらいまで冷やさないと超電導になりませんでした。応用を考えると、さすがにこの温度は低すぎる、もっともっと高い温度で、欲を言えば室温で超電導ができないか、となるわけです。研究が進むにつれて段々と転移温度が上がっていって、1980年代に最大のブレークスルーが起こります。このときは、銅酸化物が超電導体になることが発見され、その後この銅酸化物についてとんでもないペースで研究が進んで、138 K(-135℃)という世界最高記録が樹立されました。それでも、もっともっと高温で超電導になってほしいと期待するのですが、ここからはなかなか転移温度が上がっていかなかったようで、分野としては停滞してきたところに、最近になって鉄系の化合物が超電導体になることが発見されたということです。現在、鉄系化合物超電導体の転移温度は56 K(-217℃)まで達しているそうです。

本文には、鉄系化合物が現在脚光を浴びている理由がいくつか書いてあります。箇条書きにすると、

・転移温度がどこまで上がるかまだ誰にも分からない。
・鉄の化合物は工学的応用に向けて加工するのが銅酸化物に比べて容易である可能性がある。
・磁性は超電導を壊す方向に働くはずなのに、強磁性の鉄が超電導を示した。それは不思議。
・銅酸化物を唯一の高温超電導体の座から引きずりおろした。

最も興味深いのは、最後の項目だと書かれています。銅酸化物超電導体の転移温度が何故高いのかが、実は理論的に説明できていないようです。高温超電導体が2種類に増えたことにより、両者を比較することができるようになり、謎の解明が進むかもしれないとのことです。10ページ以上に及ぶ解説文なので、層状構造のことや、フォノンのことなどが書かれていますが、キリがないうえに私に説明できる気がしないので、この先の超電導の奥深い話は止めておきます。

鉄系化合物による超電導体は2006年に東京工業大学の細野秀雄教授らによって発見されたそうです。NHKの「プロフェッショナル…(なんとか)」という番組で細野先生が取り上げられているのを見た記憶があります。正直言って番組そのものはさほど面白くなかったですが、凄い発見をしたんだなあと思っておりました。超電導体というと、大学生の頃に学生実験で黒い粉みたいなものをすりこ木ですりつぶして作った記憶があります。「超電導」という名前の割りに、実験の作業はとても地味だったように思います。まあ、実験って何でも実際は地味なんでしょうけど。

それから、研究の世界にも「はやりすたり」があって、超電導の研究では、まさに「フィーバー」が起きるという風に聞きます。今回の鉄系化合物の大フィーバーについても、細野先生の執筆で記事の中に書いてあります。"cond-mat"という、れっきとした論文誌に掲載される前に論文を公表するWebサイトがあるのですが、ここにこの分野の論文が1年3ヶ月くらいの間に1000報以上掲載されたそうです。一日2報以上ですから、相当な数ですし、論文誌に投稿してから掲載されるまでにかかる数ヶ月間でも遅れをとったら、勝負にならないのでしょう。私の博士論文なんて、5年のうち4年間で準備して、1年でデータを取ったと言っても過言ではないですから、このペースは私には想像できません。

よく疑問に思うのは、新たな超電導が発表されてから短期間の間に「いったいどこから研究者が集結し、そしてフィーバーが去るとどこへ行ってしまうのか?」ということです。こういう研究スタイルに強いのはアメリカで、なにかブレークスルーが起きるとあっという間に数多くの研究者が参入し、面白いところを食い尽くして、いつの間にか去っていくという印象があります。このスタイルが良いのかどうかという議論もありますが、少なくともそれができる環境があるのだと思います。世界中から優秀な頭脳が集まってくるので、人的な戦力が確保できるうえに情報の行き来が早い。そこに多額の予算が迅速に付く、などなど。そのほかにも私の知らない理由が色々とあるのでしょう。こうした研究体制について、日本もいろいろ分析したほうが良いのでしょうね。どういうシステムを作ればいいのか、どこを真似て、どこは真似しなくてもいいのか、などなどを。最近の事業仕分けで、科学技術の研究費について色々取りざたされていますが、お金以外の部分で見直すべきことも多いような気がします。

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プロフィール

バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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