重力波は歌う その5

家を出るとき、「あ、鍵を忘れた」と急いで居間に戻っていくときにキッチンの水はねガードにカバンのベルトが引っかかり、床に倒してしまいました。
バラバラになったがガラス板が割れていない。朝からショックだが悲劇的でなくてよかった。
すごいぞニトリ、ありがとうニトリ。
ささやかながら感謝の印にリンクを貼っておきます。
https://www.nitori-net.jp/store/ja/ec/5608761?ptr=item

さて本題です。
今日は「重力波は歌う」(ジャンナ・レヴィン著、田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)の第5章(ジョセフ・ウェーバー)より。

長い長い時間をかけて、ようやく2015年に初観測に至った重力波。しかし、なんと1969年に重力波の初観測を発表した人がいたのです。それが、メリーランド大学のジョセフ・ウェーバーさん。

長さ約2 m, 直径約1 m, 重さ1.4 t近くのアルミニウムの円柱で、これが重力波に共鳴して振動するというのです。ワイスさんやドレーヴァーさんが作ってきて、その後2015年に重力波観測に至るレーザ干渉計とはまるで違う装置です。

予算的にも割と実験を試みやすいというのもあったのでしょう。このウェーバー・バーと呼ばれる金属棒は世界中で作られていったそうです。しかし、ウェーバーさん以外には重力波を検出できなかった、再現できなかったのです。他の科学者たちから厳しい疑いの目を向けられることになります。

ウェーバーさんも引き下がるわけにはいきません。しかし、ことごとくうまくいきません。あるとき、銀河の中心が頭上にくる24時間ごとに信号がまとまって記録されることに気づき、信号の発生源は銀河の核ではないかと考えたそうです。それを発表したのですが、「重力波は地球を通り抜けるはずだから、12時間ごと、すなわち銀河が頭上と足下にあるときに記録されるはずじゃないの?」と突っ込まれます。そこでウェーバーさんはデータを分析し直し、数週間もしないうちに事象が12時間ごとに頻発していることを示すグラフを提示したそうです。

また、互いに遠距離離れたウェーバーさんと他の2グループがそれぞれウェーバー・バーを設置し、3者間に直接回線を引いて、互いのデータを直接比較できるようにしました。要するに、同じタイミングで3箇所が同時に信号を観測したのなら、近場の雑音ではなく確かに宇宙のかなたに起因する信号だという説得力が高まるということです。しかし、他のグループで校正目的で意図的に入れたパルスと同じタイミングで、ウェーバーさんのデータにも信号が入っていたそうで、いかにも怪しいわけですが、さらに悪いことに、他の2箇所はグリニッジ標準時で記録されていたのに対し、ウェーバーさんはアメリカ東部夏時間で記録していたそうです。すなわち、校正目的で意図的に入れたパルスとちょうど4時間ずれたタイミングで偶然にも信号が検出されている?もう、怪しいにもほどがあります。信用されなくなりました。

それでも、ウェーバーさんは自腹で実験棟を維持して実験を続けていたそうです。そしてすでに80歳を過ぎていた2000年の冬、実験棟の前で氷に足を滑らし、その8ヶ月後に亡くなったそうです。

いわゆる捏造事件ですが、この本ではかなり敬意が込められているように感じます。レーザのマイクロ波版であるメーザーの概念を考案した等、ノーベル賞を取っていてもおかしくない人として紹介されており、この件を除けば業績のある人としての敬意かもしれません。弱っている人を目の敵にするだけじゃ、いけないってことなのでしょうか?

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重力波は歌う その4

私は江戸っ子でもなんでもないんですが、深川に引っ越してきて、この辺はやっぱり昔ながらの風習が残っているんだなあと思うことがあります。

この間は、子供達20人くらいが「火の用心」の夜回りをやっていました。

ひのよーじん(カン、カン)
サンマ焼いても家焼くな

うむ、かわいいぞ。


さて本題です。
今日は「重力波は歌う」(ジャンナ・レヴィン著、田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)の第4章(カルチャーショック)。スコットランド出身のロナルド・ドレーヴァーさんの生い立ちと、カリフォルニア工科大学(カルテク)のソーンさんからオファーを受けてカルテクに渡るまでの話が書かれています。

気難しい神経質な人だったそうです。ただ研究に関しては天才的で、通常の論理に頼らないで直感を働かせる能力があったそうで、ワイスさんによれば「科学界のモーツァルトとでも称するべきオーラをまとっていった。」とのこと。

「ドレーヴァーは毎日、アイデアを洪水のごとくチームに浴びせていた、と誰もが異口同音に言う。アイデアはいくらでも出てきた。しかし決断が下されることはまれだった。翌日になると、ドレーヴァーは自由に研究できる喜びを改めて味わい、困惑するチームにまた新たなアイデアの洪水を浴びせかけるのだった。」
とあります。周りは大変でしょうね。実験って意外とコツコツとやることが多くてそんなにアイデアの頻度自体は多いわけでもないと思うのですが、毎日この調子では、真面目な人ほど辛いでしょうね。

「お金をかけずにできる」ということに喜びを感じたようです。マッハの原理を調べるヒューズ=ドレーヴァー実験というのがあるのですが(私はよく知りません。すみません。)、よその大学のグループ(おそらくイェール大学のヒューズ)が研究グレードの磁石を使ってやったのに対し、ドレーヴァーさんは地球の磁場を使い、さらに自動車のバッテリーとワイヤーを使ってより高い感度を実現したのです。そういうのが愉快だったそうです。私も正直、研究資金に恵まれている方ではないので、気持ちはわかります。(大きく出すぎました、すみません。)むしろ恵まれてない方が燃えるものがあるというか、腕の見せ所といったところがあるようです。私もそうといえばそうですが、結局大したアイデアは浮かばず、金がない愚痴が始まるんですよね。(ため息)

さて、カルテクからオファーが来た時には、ドレーヴァーさんはすでにグラスゴーで独自の干渉計を作っていました。研究資金などを考えても明らかに魅力的なオファーだったのですが、資金が少ないものの自由に研究ができる地元グラスゴーとの間で気持ちが揺れることになります。しかし、結局カルテク行きを決意します。世界最大の干渉計を手中にし、ソーンもいる。「金をかけずにできる」人に最高の研究環境が整う。「どんなライバル候補も置き去りにできるはずだ」そうドレーヴァーさんも確信するのです。

しかし、それですんなり行くわけではないんです。その辺はまた、次回以降に。

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重力波は歌う その3

浅草の看板第2弾です。
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警告
大小便、不法投棄は犯罪です。・・・発見しだい警察通報の上、損害金を請求いたします。
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大小便って、犬や猫だと思いますが・・。いや、犬猫なら糞尿ですか。。。
面白い所です。

さて本題です。

今日は「重力波は歌う」(ジャンナ・レヴィン著、田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)の第2章(雑音のない音楽)。重力波観測実験の初期段階から関わってきたマサチューセッツ工科大学(MIT)のライナー・ワイスさんの生い立ちから、プロトタイプとなる一辺1.5 mの干渉計を作った頃のことが書かれています。

幼い頃からオーディオが好きだったようで、ニューヨークのブルックリンのパラマウントシアターで処分されたスピーカーを手に入れて、自作の回路を使って素晴らしい音を響かせていたそうです。重力波を「音」だとすれば、すごく繋がっていると、まあ、言えるんでしょうね。

そのほか、子どもの頃ドイツからチェコスロバキア、さらにはアメリカに逃げてきた話とか、大学を退学して女を追いかけて、失恋したのをきっかけに物理研究を始めたとか、いろいろ書いてあります。その中で私があえて着目したのは、一般相対性理論のことなど分からないのに、それを教えていたという部分です。

MITで教授になった頃、MITには一般相対性理論が多少はわかっているはずだと思われていたが、実はほとんど分かっていなくて、分かったふりをして相対論の講義を綱渡りで行っていたそうです。ただ、そこで自分の得意な実験に重点を置きながら講義をしていて、そこで重力波観測を具体的に考えていったのです。「一般相対論の講義で実験に重点を置くというのは、ふつうはやらないでしょう。」とワイスさんが述べていますが、今現在でも基本的に理論屋さんの領域でしょうね。1960年代から実験を考えていたというのは、それ自体が独創と言えるんでしょうね。

こんな大物でも「やべえ、実は俺分かってねえ」って状況に陥っていたとは、私と同じではないかと(いや言い過ぎ、大きく出過ぎ)、正直、なにかホッとします。「こういう窮地は誰にでも訪れるもの」だそうです。窮地を大切にしていきましょう。

また、「不完全な結果や未熟なアイデア、粗雑な実験を、査読つきの学術誌に出してはならない」という方針でやっていたそうです。(これは私には耳が痛い。)誠に高尚ですが、やっぱり現実に研究者としてうまくやっていくという風にはいかなくなります。重力波観測は、資金がなくなってきて、学生も研究室におけなくなって、立ち消えかけてしまったようです。

しかしそのころ、すでにカルフォルニア工科大学で天体物理学者として業績を積み重ねていたキップ・ソーンさんと出会うことになります。ソーンさんはこれからやるべきデカイ仕事として、重力波に狙いを定めていたのです。

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重力波は歌う その2

浅草でこんな看板を見かけました。写真をアップできないのが残念ですが。
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「暴力、たかり、スリ、娼婦」が多くなっています。
発見したらすぐ「一一〇番」をしてください。
           浅草警察署
           浅草ひさご通り商店街
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娼婦って・・・面白い所です。

さて本題です。

今日は「重力波は歌う」(ジャンナ・レヴィン著、田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)の第1章(ブラックホールの衝突)。いわゆる序章です。

重力波というのは、よく「時空のさざ波」なんて言われます。すごく質量が大きいけどどこかの都市の大きさしかないブラックホール2つが衝突するとき、最後の数秒間に互いの周りを数千回も周回して時空をかき回し、やがて1つのブラックホールになるのだそうです。このとき太陽の10の21乗個分のエネルギーを放出するのですが、光としては現れず、時空を揺るがす波として伝わり、それが重力波とのことです。詳しいことは、私が説明するより、http://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp/plan/aboutu-gw あたりを参考にしてもらうのがよろしいかと思います。

この本では、重力波のことを「音」と表現しています。なるほどなと思います。よくイメージするような光学的な望遠鏡では観測しようがないですから。ブラックホールが発した音自体はおそらくとんでもなくデカイのですが、地球に届く頃には「地球1000億周分の距離を髪の毛1本分の太さにも満たない幅だけ伸縮させる変化」になってしまうのだそうです。こんな僅かなものを観測しようというのだから、すごすぎて訳わかりません。LIGO(ライゴ)と呼ばれる装置(というか観測所ですが)は1辺4 kmのL字型(写真)。総費用は10億ドル以上。しかし、この装置を元からデカく作ろうと思っていたわけではなく、第2章に出てくるライナー・ワイスさんが最初に作ったものは意外と小じんまりとした1辺1.5 mのものだったそうな。

この手のビッグプロジェクトって、偉い先生が巨額の予算を取ってきて、人を集めてきて組織して、計画を遂行する、って感じだと思っていましたが、少なくとも初期の頃は違っていたようです。第2章では、ライナー・ワイスさんの紹介と共に、その辺りのことが出てきます。

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重力波は歌う ーその1ー

どうも、バラッくまです。
お久しぶりです。
といっても、3年近く更新してなかったですから、見てくれていた数少ない方々も、このブログのことなぞもう完全に忘れていると思いますが。

この間につくばから深川に引っ越して参りました。職場はつくばのままなので、通勤時間が余計にかかるのが更新が滞った理由・・・いや、単に徐々に面倒臭くなっただけです。

今になって復活させてみようかと思います。なぜ今更なのかといっても、まあ、そんな気分なんですね。

以前のは、ちょっと科学技術そのものに寄り過ぎていたかなあと反省しております。まあ、アクセス数は10-20/日くらいで、それでも本当に嬉しかったけど、それ以上に増やそうとか全く思っていませんでしたから。これからは、ちょっと語弊があるかもしれませんが、少しは商売っ気を出そうかと思っております。

具体的には、一般の書店で売っている本からピックアップして、少し一般受けしそうな方向へシフトしてみようかと思っています。そして、同じ話で引っ張って労力を減らすという方向でいきたいと思います(素直だな、俺)。といっても、結局物理の話がメインですから、どうにもならない部分もあろうかと思いますが。

ということで、今回からしばらく取り上げるのは、「重力波は歌う」(ジャンナ・レヴィン著、田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)。2016年2月にニュースとして駆け巡った、重力波の観測に関する本です。重力波の観測を試み始めた1960年代から最近の初観測に至るまで、その栄光の裏にあったいろんな紆余曲折について書かれています。様々な人たちが登場して、いろんな人間模様が描かれています。所々ピックアップして私の感想やら考えやらを、なるべく面白く記していければなあ、と思っています。

そういえば、私も以前重力波について記事を2件書いています(これこれ)。

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プロフィール

バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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