量子物理学の発見 その1 科学は最高の投資先

メタボっぽいので、最近筋トレしつつ、毎日朝晩体重などを計っているわけですが、ある日、朝から晩にかけて1.5 kg増えるという信じられない事態が起こりました。

心当たりは、夕食で食べた陳○一麻婆豆腐店の麻婆豆腐です。確かにカロリーが高そうだったけど、まさかダイレクトにここまで体重が増えるとは・・・
ただ、名誉のために言っておくととても美味しかったです。と言って、埋め合わせておきます。




さて、本題です。
今回からしばらくは「量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語 (レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル 著、 青木薫 訳)」より。ヒッグス粒子などの素粒子物理学に関する最新のトピックスに関する話が書かれているようです。(全部読んでいないのでわかりません。前回の「重力波は歌う」では全部読んでから書いていましたが、読みながら書くことにします。忘れちゃうんで。)

今回は、「第1章 宇宙の始まりを探る旅」より。導入部なわけですが、いきなり予算がつかなかったことへの恨み節から始まります。こういう科学本も珍しいと思います。要するに、アメリカで予定されていた超伝導超大型加速器(SSC)のプロジェクトが1993年に中止になってしまったことの話です。ヒッグス粒子(今日は説明しません)は2013年ごろにスイスとフランスの国境近くにあるCERNという施設で発見されたわけですが、このSSCが実現していればその10年くらい前に発見されていたはずらしいです。それは関係者にしてみれば悔しいでしょうねえ。実験自体が巨大施設で行われるだけに、予算を得るには議会を通らなければならなかったり、それはそれは大変そうです。いくら自分たちが頑張ろうとしても、議会を通らないから打ち切りというのは、悲しくなってきますね。

ポール・ローマーという経済学者曰く、「経済は、科学への投資によって成長する」そうです。これを引用して、科学に投資しろと、熱弁しております。「科学への投資が大きければ大きいほど、配当金は高くなる」「投資先は多様なほうがいい。みんなに仕事と豊かさをもたらす大きな経済の動きを生み出したければ、基礎科学に投資しなければならない」「投資に対する見返りには、ほとんど際限がない。そればかりか、これほどうまい投資先はほかにないと言ってよい。」等々。そして、CERNで生み出されたウェブ・システムを例に出して、基礎科学への投資の重要性を強調しております。

アメリカというと、我々からすると羨ましいくらいに科学技術予算が潤沢にあるようにイメージするのですが、結構ビッグプロジェクトが潰されているらしいです。もうアメリカはダメだ。これから経済を成長させられるのはヨーロッパ、中国、インドなどだろう、と述べられております。単純に科学技術予算でわかるのか?と思いますが、単純にそれで分かるそうで、少なくとも物理学の研究者にとっては分かりきったことだそうです。私はそこまでは分かっておりませんでした。修行が足りないようです。

とりあえず、「それが何の役に立つのですか?」とか、プロジェクトの計画段階で経済的な見返りがあることを示せとか、少なくとも日本では問われることが多いですが、やめてほしいものです。そして、やめてくれと自信を持って言っていいんだと思わせてくれるような、本書の書きっぷりでありました。

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重力波は歌う その9

風邪をひいてしまいました。
インフルエンザじゃなくてよかったです。インフルエンザだったら、妻に殺処分されていたでしょう。
常に死と隣り合わせであることを再認識しつつ、本題です。




今日は「重力波は歌う」(ジャンナ・レヴィン著、田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)のエピローグ。ついに重力波が観測されるところの話です。

前回取り上げた初代総括責任者のヴォートさんは、結局、資金の出どころである国立科学財団の担当者に怒りを爆発させたのを機に、退任したそうです。(前回書き忘れました。すみません)

これが1994年。この後を継いだ総括責任者のバリー・バリッシュさんは、ソーンさん曰く「史上最も有能な大規模プロジェクト管理者」だそうで、ここからLIGOは息を吹き返す事になります。そして、2015年の重力波の初観測に至るのです。さりげなく書きましたが、息を吹き返してから約20年ですからね。やはり壮大なプロジェクトですよね。よく予算が続くものだと思います。

重力波を観測した時の様子が書かれていますが、やはりこの巨大な装置は常時運転されているわけではないんですね。2箇所ある観測所のうちのルイジアナ州の方は、重力波到達のわずか1時間前に観測モードに入ったようです。まあ、運もありますよね。もっとも、ちゃんと準備していないとその運も掴めないわけですが。また、これだけ長いプロジェクトで、アインシュタインが重力波に関する最初の論文を出した1916年から99年後(論文発表はちょうど100年後ですね)に観測されるというのは、まあ偶然なんでしょうけど、何かあるのですかね。

この観測結果は、とても初観測とは思えないほど、理論的に推定されたものと非常によく一致するんです。信号の形から、ブラックホール同士の衝突によって生じた重力波だとわかるし、ブラックホールの質量まで割り出せてしまうのです。長さ4 kmの干渉計のアームに生じた、陽子の大きさの約一万分の1の変化を観測したのだそうです。何度も言うようですが、とんでもない精密測定ですね。

最後に、この本を通じて、なんとなく文学的な表現が多いように思うのですが、pp. 264-265の文章が、今回の重力波観測がどういうものかをうまく表現していて良いと思うので、引用させていただきます。私も自分の研究をこんな風に語れるようになりたいものです。
「数十億年前、二つの大きな恒星が互いのまわりを回りながら存在していた。まわりに惑星があったかもしれないが、この連星系は惑星を宿すには不安定すぎていたかもしれないし、組成が単純すぎていたかもしれない。やがて片方が死に、次いでもう片方が死んで、ブラックホールが二つできた。そして漆黒の中、おそらく10億年単位の時間、互いのまわりを回っているうち、最後の200ミリ秒で衝突・合体し、その二つに出せる最大の重力波を宇宙空間に放った。
 その音は14億光年のかなたからこちらへやってきた。14億光年のかなたからだ。LHOでロック状態が達成されたのは波が地球に達する数時間前、LLOでは1時間前だった。その日の深夜、ワシントン州の科学者たちは長い1日の作業を途中でやめて、家路に就いた。ルイジアナ州の科学者たちはいらいらを募らせつつも工具を置いて、装置を観測モードにして放っておいた。1時間もしないうちに、波が地球に達した。重力波は南天からやってきて、ルイジアナをあっという間に駆け抜けてまずLLOで音を立ててから、光速でほぼ大陸面に沿って進んで、10ミリ秒と経たないうちにLHOに達した。」

結局、この本だけで「その9」まで書いてしまいましたか・・。長々と付き合って頂いた方、ありがとうございました。

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重力波は歌う その8

柔軟剤の詰め替え用を買って、洗濯機を回してから、空のボトルを捨ててしまった事に気づきました。
とりあえず、開封して1回だけ使い、今はガムテープで塞いでありますが、見るたびに悲しくなります。




さて本題です。
今日は「重力波は歌う」(ジャンナ・レヴィン著、田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)の第11章(スカンクワークス)、第13章(藪の中)より。カルフォルニア工科大学(カルテク)の学務部長だったロフス・ヴォートさんが重力波観測所LIGOの統括責任者となってから退くまでの話が書かれています。

元々ヴォートさんは惑星探査機ボイジャーの主たる実験の1つ、宇宙線測定システム実験の責任者を務めるなど、大きなプロジェクトのリーダーを務めてきたようです。ただ、ボイジャーにしろ学務部長にしろ、ある意味辞めさせられているわけで、何かありそうな感じです。「問題解決に秀で、問題を起こす事に長けた人物」なんて書かれています。

本を読む限り、巨額予算を確保するべく国立科学財団やら議会やらを相手にして、私から見ると相当に尽力したように思えます。科学技術のバックグラウンドを持った上で政治的なことで駆け回ったわけだから、さすが、偉いポジションにいたというだけの、なかなか貴重な人なんじゃないかと思います。実際、予算はしっかり取っているわけですし。

しかし、プロジェクト内部の統率となると、何と言っても普通の人たちじゃないし、特にドレーヴァーさんなんて、他の科学者から見ても天才的過ぎて付いていけない人だったわけで、まあ、難しいですねえ。直感的なドレーヴァーさんのやり方がヴォートさんには非科学的に見えたようで、攻撃をし始めたようです。そのうち、ヴォートさんはドレーヴァーさんに理不尽としか思えない2つの規則を押し付けます。ドレーヴァーさんによれば、その1:ヴォートとドレーヴァーは同時に同じ部屋にいてはならない。その2:ドレーヴァーはコピー機や電話機などの備品を一切使用してはならない。これ、パワハラでしょう。そしてそのうち、ドレーヴァーさんはプロジェクトから外される事になります。

いやー、あるんですか、こんなことが。才能のある人を潰しにかかるとは。アメリカの科学の世界はこういう異才を大事にするシステムが出来上がっていると思いきや、結局は上司次第なんでしょうか。

「あの人一体何やったんですかね?」と言いたくなるような、いるんだかいないんだか分からない、何やっているのかよく分からないくらいのリーダーの方が、後になって、「今思うとあの人の時が一番良かったですよね」って事になるように、私は最近思っております。そういえば、「最高のリーダーは何もしない」というタイトルの本があり、タイトルに惹かれて読んでしまいました。1ページあたりの字数がやけに少ない今時の本ではありますが、紹介しておきます。

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重力波は歌う その7

うちから割と近いところに富岡八幡宮という大きな神社があり行ってみたのですが、江戸勧進相撲の発祥の地で、横綱力士碑という立派な石碑がありました。http://www.tomiokahachimangu.or.jp/htmls/sumou.html 新横綱が誕生すると刻名式が行われ、横綱土俵入りが奉納されるそうです。ぜひ稀勢の里の土俵入りを見に行きたいものです。何も知らずに引っ越してきて、得した気分になっております。

さて本題です。
今日は「重力波は歌う」(ジャンナ・レヴィン著、田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)の第10章(LHO)より。2つある重力波観測所LIGOの一つ、アメリカワシントン州南東部にあるLIGOハンフォード観測所(LHO)についての紹介・説明と、ワイス、ソーン、ドレーヴァーによる3人体制の崩壊について書かれています。

砂漠に似て非なる場所に数kmのトンネルを掘って、そこで超精密実験をやるというのだから、いかにも大変そうだし、実際には泥臭いことがいろいろあるんだろうなと思っていたら、その辺のことを色々書いてくれています。

「虫の問題」なんてのも書かれています。いかにも現実的で問題ですね。いや、あると思いますよ、私の実験室も地下なのですが、全面コンクリートで囲われていて入ってくる場所なんてないはずなのに、いるんですよね、こやつらは。最初に数kmのトンネルの中を歩いたのはワイスさんだそうですが、そこでネズミ、スズメバチ、クロゴケグモ、ヘビが住み着いていたそうです。一応実験装置の外だから、見て見ぬふりをしたくもなるでしょうが、こやつらの糞尿が装置を腐食することもあるようです。また、振動があればノイズになってしまいますから、こやつらが近くで動いただけでもダメなのかもしれません。虫や動物の駆除なんてことまでしなきゃいけないというのが、やはり、現実ですよね。

それから、3人体制についても書かれています。以下、ワイスさんによる(ロン)ドレーヴァーさん評を引用します。
「ロンは非常に扱いにくい人物でした。・・・(中略)彼は物事を視覚的に考えます。自分が前の日に考えたことなど忘れてしまうので、周囲の者は何も決められません。・・・(中略)彼と議論して、同じ結論にたどり着いて、彼が自分の見方の誤りを認めたとしても – あるいははっきりと認めないかもしれませんが – 翌朝になるとまったく同じところから議論をやり直すことになります。そしてまた同じ結論に至るのです。毎日毎日、これの繰り返しです。」

これだけ読むと、頭が悪いんじゃないかと思えるかもしれませんが、むしろ逆なんでしょう。ワイスさんにとって論理的に結論づけたことでも、ドレーヴァーさんにとっては直感的に違ったんでしょう。「モーツァルト」なんですね。でも、作曲は一人いれば十分(複数いても邪魔)ですが、ここまでビッグプロジェクトになってしまったらそうもいかず、「ほかの人とうまくやることが求められるとは少しも思っていなかった」ということなのでしょう。

結局3人体制はうまくいかず、責任者を一人に絞ることになり、カルテクの学務部長だったロビー・ヴォートさんが選ばれることになります。しかし、これでうまく回り出すかというと、そうでもないんですね。その辺はまた後日。

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重力波は歌う その6

稀勢の里おめでとう。
今までここ一番で勝ったのを見たことなかったように思うのですが、今回は・・・
今回はここ一番が来る前に白鵬がコケて優勝が決まっちゃったような・・・
いや、何だっていいんです、優勝すれば。
私はいつもそうやっています。

幕内優勝級の成果なんてないくせに、と言われたら返す言葉もないですが、本題です。
今日は「重力波は歌う」(ジャンナ・レヴィン著、田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)の第6, 7章より。

重力波の話はとりあえず置いといて、ワイスさんのセリフを。(第6章)
「・・・アイデアを出すことと実際に手をつけることは大違いですから。別物なんです。若い人たちがアイデアを思い付き、どこかで発表して、自分のものにしたあと、その実現のために自分では指一本動かさないのを目にすると本当に腹立たしくなります。彼らは苦労して最後まで見届けたわけではありません。称えられるべきは、そして発表すべきは、そのアイデアを実現させた人たちですよ。」

科学的な何かを実現した時、その原理を考え出した人が偉いのか?それを実現した人が偉いのか?もちろん両方やったら文句なしですが。

なんとなくですが、「原理を考えた人が偉い」派の人の方が多い気がします。「実現した人」は、すでに考えられていた原理をそのままやっただけ、みたいな。特許のような知的財産の考え方からすると、「原理を考えた人が偉い」になるんでしょうね。でも、私はケースにもよりますが、7:3くらいで「実現した人が偉い」派なんです。それほど論理も信念もあるわけではなく、なんかそう思うといったところですけど。ワイスさんははっきりと「実現した人が偉い」派で、これほど確固として言ってくれると、「俺そんなに間違ってないよな」と思えます。

なんで私が「実現した人が偉い」派なのかと考えてみると、何か重大なものが実現されてから、何か過去にチョロっと書いたのを持ち出して「あれを最初に考え付いたのは私だ」みたいに主張する人がいかにもいそうだからでしょう。それを言うなら何かしら実現のための努力をしろよ、と言いたくなります。

さて、話は第7章ですが、通常の実験室レベルでは重力波検出は無理、とワイスさんは結論付け、ソーンさんやドレーヴァーさんとともに7000万ドルの巨大プロジェクトを立ち上げる方向に進みます。実験屋のワイスさんもドレーヴァーさんも巨大プロジェクトにはしたくなかったようです。科学技術というより、事務手続きとか組織づくりとか、煩わしいことが増えるでしょうし。7000万ドル分の経費内訳を積み上げるとか、議会を通すとか、いかにも面倒そうなのは想像できます。そして、この本を読む限り、このお二方は純粋に科学好きで、キャラ的に違うように思います。

ともあれ、マサチューセッツ工科大のワイスさんと、カルフォルニア工科大学のソーンさんとドレーヴァーさんのトロイカ体制がスタートすることになります。しかし、「船頭多くして船山に登る」はアメリカでも当てはまるようなのです。その辺はまた後日。

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プロフィール

バラッくま

Author:バラッくま
色々あったのち東京深川在住の科学技術系の研究者。
クマに似ている。最近はカピバラにも似ている。
専門: 量子エレクトロニクスなど。
休みのときは、(有休を取ってまでして)落語、スキューバダイビング、スポーツ観戦(相撲など。両国が近いのでうれしい。)、音楽鑑賞などを少しずつ。

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